ミッドガルドの片隅で。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

posted at --:-- | スポンサー広告


さかしまなりさかしまなり…

その人はそう、いつも口癖のようにつぶやいていた。


The past -Side S-


さかしまなりさかしまなりさかしまなりさかしまなり…

淡々と繰り返されると、単なる単語が呪のようにも聞こえてくる。なまじ単語が単語だけに、そしてそれを口にするその人がその人であるだけに、普段年齢らしからぬと言われ続けるほど何事にも動じぬ肝を持つ私ですら言い知れぬ不安めいた居心地の悪さを感じるのだ。

ねぇシャム。

繰り返し繰り返しつぶやき続ける唇の動きがその律を乱して名を呼んだ。院の外ではしゃぎまわる子どもたちの声にかき消されるような小さな声音であったが、名を呼ばれればそれで十分であった。名は力を持つ。それに気づかぬ自分ではない。
その人は歌うように言った。

陰のさかしまは陽。
陽のさかしまは陰。
善のさかしまは悪。
悪のさかしまは善。
すべての物事には真逆が必ず存在するの。
そうでなければ物事は成り立たないのよ。

遠くを見つめてまた先ほどの単語をつぶやき始める。話は終わったものと私も自分の作業に戻った。難解な古語・異語を読み解けば新たな視点が現れる。物事は単一であるのに多様だ。その視点を探る作業は何よりの遊びであった。これもまた、年齢らしからぬといわれるところである。

さかしまなりさかしまなりさかしまなり…

不意に、
くるり。
とその人がこちらを向いた。
私は数週間この孤児院に滞在し続けているその人の顔を今はじめて見たことに気がついた。

そう。すべての物事にはさかしまが存在するの。

こちらを見据えるアンバーの瞳はまるで日の光のような強い力を持ち輝いている。知らず、喉が鳴った。

シャム、私はあの子を全身全霊で愛しているわ。
だから―

視点を私に固定したまま、その人は私ではない誰かを見つめている。それが誰であるのか私には分からない。が、そこに何の興味もなかったので構わなかった。私の興味は、その人の知りうる限り全ての教会法であり、それが起こす「御技」と呼ばわれるものでしかなかった。

ねぇシャム、愛さないことこそが愛することだと言うのもまた、ありうることなのね。

だから、その言葉が意味することも、考えることはなかった。
ただ、生まれついて以来の習性で情報としてその言葉を記憶していただけだった。

そのことを、後にどれほど悔やむかは、今の「私」はまだ知らなかった。




posted at 00:07 | らいと&どろう。 | TB(0) | CM(0)

この記事に対するコメント


この記事に対するコメントの投稿
















この記事に対するトラックバック

ぷろふぃーる。

ごちゅうい。

© Gravity Co., Ltd. & Lee MyoungJin(studio DTDS). All rights reserved. © GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. 当コンテンツの再転載・配布等は禁止しています。

かれんだー。

05 | 2018/06 | 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

かてごり。
ブログ内検索

管理人通用口


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。